■これからの、日本酒と食
日本酒の飲まれる場所は和食の料理屋さんだけに限定する必要はありません。大事なのは“お料理とお酒の相性を創造すること”だと思います。
先にお話した新しい発想力を持つお蔵様は、時代の食にもうまく合う日本酒を造ります。日本酒の「甘い、辛い」を表現する基準の一つに“日本酒度”というものがあります。日本酒の味はそれ以外の部分が大切で「酸」が味を大きく左右します。アミノ酸・酢酸・リンゴ酸・・・様々な「酸」がおいしさの秘密でもあります。
どんなお酒かというと、大手メーカーが出すお酒とは違い「スパッ!」とキレます。
大手のパック酒のほとんどは、味に深みも繊細さも無くベタベタといつまでも口の中に残り不快です。(それが日本酒と思われていること事態が日本酒にとって不幸なことです。)
食べ合わせの話をするならば、、和食で繊細なヒラメのお造りなどには、味もサラリと柔らかくスッと消えるような“純米酒”が合いますし、脂の乗った近海のクロマグロには、負けないくらい濃醇な味わいで魚の油をしっかり切るような酸味のある“吟醸酒”がよく合います。
同じ、白身魚でもスパイスの利いたカルパッチョなどには、香りの高い“大吟醸”などもお薦めです。純米酒・吟嬢酒・大吟醸酒と話しましたがこれは お米の磨きの割合いやアルコールを添加しているか、そうでないかで分けられます。ここら辺は、良心的な地酒屋さんならどこでも丁寧に教えていただけると思います。
それ以外で、日本酒と食の提案の中で面白く、美味しいのは「燗酒」の提案です。
日本酒に限らずアルコールは温めると、裸になると言って良いでしょう。美味しいお酒はより美味しく、そうでないお酒はそれなりに・・・。昔CMにあったフレーズのようですが、その通りです。
特に8月。夏を超えてようやく味が乗って来る「冷卸し(ひやおろし)」や「秋あがり」はお燗にすると格別です。
お酒は新酒の出来上がる4月に関評会・品評会が行われますが、本来お酒を評価するならば9月にするべきでしょう。
ここでも、しっかりとした造りで造られた日本酒は味に丸みを帯び、どんどん美味しくなります。当店でも造られて1年してやっと、店頭に並ぶお酒もあります。
お酒の話ばかりになりましたが、私達の考える日本酒は、“お食事の引き立て役”であって欲しいと考えます。1昨年までの焼酎ブームにみられた「あの店に行けばあの焼酎が飲める!」ではいけないのです、きっかけであっても。料理屋さんもそう。「あの店に行けばあれが美味しい!」「また、それに合うお酒も飲める!」であって欲しいのです。
焼酎を500も1,000も集めて、それで肝心なお料理がお粗末では本末転倒ですし、焼酎文化をもオカシクしてしまいます。美味しいお料理を提供する本当の料理屋さんの引き立て役でありたい・・・。日本酒も私達『株式会社 松仙』もそうでありたいです。
『株式会社 松仙』 飲食店創造アドバイザー 坂井博文
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